Topニュース調査レポートソフトウェア開発における「開発生産性」に関する実態調査レポート

ソフトウェア開発における「開発生産性」に関する実態調査レポート

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はじめに

近年、ソフトウェア開発における生産性向上の重要性が高まっています。AI技術の活用が進まないことにより、日本のIT業界の国際競争力が低下する懸念が顕在化しています。IT人材の不足やレガシーシステムの問題に加え、世界的な技術革新が加速する中、特に生成AIの台頭により開発プロセスが大きく変化しており、IT業界は重要な転換期を迎えています。

こうした背景を踏まえ、当社ではソフトウェア開発における生産性の実態調査を実施しました。これまで開発生産性という概念に対するエンジニアの理解度や、AI技術の活用状況については十分な調査がなされておらず、早急な実態把握が必要とされています。

私たちの調査過程において重要な課題が浮き彫りになりました。GitHub Copilot、Cursor、Devinなどの最新AI開発支援ツールがグローバルスタンダードになりつつある一方で、国内では未だにサポート終了したVisual SourceSafeや従来型のSubversionなどを使用している組織が少なくありません。このことが先進的なAI開発支援機能の導入を阻む要因となって、将来的な競争力に重大な影響を及ぼす可能性があります。

本調査では、この課題を定量的に分析し、統計的に有意なデータに基づいた開発生産性の現状分析と改善に向けた提言を行うことを目指しています。798名という十分なサンプル数による統計的信頼性を確保し、豊富な経験を持つIT専門家からの知見を収集することで、AI活用といった技術面のみならず、組織運営、プロセス、企業文化に至るまで多角的な調査を行いました。

本調査結果を業界全体で共有することにより、日本のソフトウェア開発が直面している課題を解決し、国際競争力の回復に向けた具体的な改善策を提示する包括的な分析となっています。本報告書が日本のIT産業における変革の一助となることを願っています。

調査概要

  • 調査対象: ソフトウェア開発(組み込み開発を含む)に直接関わるエンジニア、プロダクトマネージャー、プロジェクトマネージャー、エンジニアリングマネージャー、開発責任者など
  • 調査方法: インターネット調査
  • 調査期間: 2025年4月2日(水)~2025年5月21日(水)
  • 調査主体: ファインディ株式会社
  • 実査委託先: GMOリサーチ&AI株式会社
  • 有効回答数: 798名(95%信頼区間±3.5%)
  • 統計的検定力: 80%以上(中程度の効果量d=0.5を検出)¹
  • 調査内容:
    • 開発生産性に対する認識
    • 開発生産性に関する指標の活用状況
    • 開発生産性に関する取り組み
    • 開発環境・プロセス評価
    • 組織文化と生産性

エクゼクティブサマリー

798名のIT従事者を対象とした調査により、日本の開発生産性の現状と改善策が明確になりました。

主要な発見

開発生産性に対する認識は前向きだが、実践面でのギャップが課題

  • 予想以上に、IT従事者の開発生産性に対する姿勢は前向きでした。ネガティブな見解を持つ人はわずか7.6%にとどまり、「測定は危険」という意見も明確な少数派でした。特にアジャイル実践者は65.2%がポジティブな印象を持っており、ウォーターフォール開発者の39.5%を大きく上回る結果となりました。開発生産性の定義では、「チーム効率」を重視する人が50.6%と最多を占め、個人スキルよりも組織プロセスの改善を重視する傾向が顕著でした。一方で、実際の取り組み状況には大きな二極化が見られ、25.6%が自組織の取り組み状況を把握していないことも明らかになりました。改善への意欲は高いものの、認識と実践の間にはギャップが存在し、組織内の情報共有と効果測定の仕組みが不足している状況です。

→ 詳細は「開発生産性への印象・認識」「開発生産性向上への取り組み状況」の章を参照

技術的な課題よりも組織運営の課題がより深刻

  • 開発生産性における主要な課題は技術面ではなく、組織運営に起因することが判明いたしました。具体的には、53.5%のIT従事者が「要件定義の不明確さ」を最重要課題として指摘し、次いで38.7%が「会議の過剰な頻度」、33.6%が「組織内コミュニケーションの非効率性」を課題として挙げております。これらの組織的な要因により、納期遅延、成果物の品質低下、および開発リソースの非効率的な配分が恒常的に発生している状況が確認されました。特に、日本固有の会議体制とコミュニケーション構造が、技術的な制約以上に生産性を制限する要因となっています。

→ 詳細は「開発生産性の課題と阻害要因」の章を参照

ソースコード管理ツールの差異がAI活用の格差を生む可能性

  • 調査結果から、ソースコード管理ツールの利用状況には明確な二極化が見られることが判明しました。GitHub(30.5%)が最も多く利用されている一方で、**Visual SourceSafe(15.8%)やSubversion(13.7%)**などの従来型ツールも依然として多くの組織で利用されています。この状況は、単なるツール選択の問題を超えた重要な課題を提起しています。これらの従来型ツールの利用により、CursorやDevinといった最新のAI開発支援ツール、さらにはGitHub Copilotなどの革新的なAI機能の活用が制限されることで、組織間の技術的競争力に顕著な差異が生じる可能性が懸念されます。

→ 詳細は「開発環境の二極化とAIツール活用の課題」の章を参照

DevEx(Developer Experience)に大きな課題

  • DevEx(Developer Experience・開発者体験) に関する満足度調査の結果から、開発環境の整備状況に著しい課題があることが判明いたしました。**継続的インテグレーション・デリバリー(CI/CD)パイプラインの満足度は14.2%**にとどまり、ドキュメント管理システムは17.5%、開発環境整備は24.7%と、いずれも期待される水準を大きく下回っております。多くの組織において基礎的な開発インフラストラクチャーの整備が不十分であり、開発プロセスの自動化による効率向上の機会を逸している状況が確認されました。さらに、知識共有プラットフォームに関する満足度も17.5%と低水準であり、開発環境の包括的な改善が求められる状況となっております。

→ 詳細は「DevEx(Developer Experience)を取り巻く現状」の章を参照

「何を測るべきか」の共通認識が業界全体で欠如している

  • 開発生産性指標の調査により、日本の開発現場における重要な構造的課題が明らかになりました。まず、従来型指標への過度な依存が確認されました。「バグの数」(58.1%)、「残業時間」(53.3%)、「コード行数」(52.9%)といった従来型指標の認知度が高い一方で、Four Keys/DORAメトリクス(4.3%)、SPACEフレームワーク(3.8%)などの現代的指標の浸透は極めて限定的です。つぎに、指標選択の著しい分散化が問題となっています。シャノン多様性指数(H=2.84)が示すように組織間での指標選択が極めて分散しており、認知指標数においても0~5個の層(28.4%)と11個以上の層(30.4%)という顕著な二極化が観察されます。これらの要因により、業界全体として「開発生産性測定の標準的指針」が確立されていない状況が確認されました。さらに、この指標の多様性が改善推進者の孤立化を招く可能性があります。現代的な指標(DORA、SPACE等)を理解している改善推進者が、従来型指標しか知らない同僚や上司と議論する際、共通の言語や評価基準が存在しないため、生産性向上の必要性や具体的な改善策について合意形成が困難になる場合があります。この結果、改善推進者が組織内で孤立し、効果的な変革を実現できない状況に陥る可能性が懸念されます。

→ 詳細は「開発生産性指標の認知度と活用率」の章を参照

 

開発生産性への印象・認識

本章では、IT従事者が「開発生産性」という概念をどのように受け止めているか、そして何を重視しているかを分析します。開発生産性の向上を図る前に、まずIT従事者の人々がこの概念に対してどのような印象を持ち、どのような要素を重要視しているかを理解することが重要です。

開発生産性への印象は多様

「開発生産性」という言葉に対する印象はなんですか?

表1. 開発生産性への印象に関する回答分布

選択肢 回答者数 割合 詳細内訳
どちらでもない 384人 48.1%
ポジティブ 354人 44.3% とてもポジティブ + どちらかというとポジティブ
ネガティブ 61人 7.6% とてもネガティブ + どちらかというとネガティブ
合計 798人 100.0%

約半数が中立的立場も抵抗感は少数派

調査結果から、開発生産性に対する印象について複層的な実態が明らかになりました。最も多いのは「どちらでもない」と回答した48.1%(384人)で、次に「ポジティブ」な印象を持つ人が44.3%(354人)、「ネガティブ」な印象を持つ人はわずか7.6%(61人)でした。

この「どちらでもない」という回答には複数の解釈が可能です:

  • 関心の薄さ: 開発生産性という概念に対してそもそも関心が低い
  • 経験不足: 具体的な取り組み経験がなく判断材料が不足している
  • 慎重な姿勢: メリット・デメリット両方を理解した上での中立的立場
  • 現状満足: 現在の開発環境に特段の不満がなく、改善の必要性を感じていない

重要なのは、「ネガティブ」な反応が極めて少ない(7.6%)ことです。これは開発生産性向上に対する根本的な反対や抵抗感は少ないことを示しており、適切なアプローチにより中立層をポジティブ層に転換できる可能性があることを示唆しています。

意外な結果:アジャイル実践者の方がポジティブ

本調査では、「アジャイル実践者は開発生産性が嫌いである」という仮説を立てて検証を行いました。調査結果は、この仮説とは正反対の結果を示しました。

表2. 開発手法別の開発生産性に対するポジティブ印象の比較

フレームワーク 対象者数 ポジティブ印象者数 ポジティブ率
アジャイル系 135名 88名 65.2%
ウォーターフォール 294名 116名 39.5%
25.7ポイント
  • 統計的検定結果: χ² = 23.537, p < 0.001, Cramer’s V = 0.166(中程度の効果)

なお、詳細については後述するが「開発生産性向上への取り組み」でもアジャイル実践者の方が高い傾向でした。

表3. 開発手法別の開発生産性向上への取り組み状況の比較

フレームワーク 対象者数 取り組み実施者数 取り組み率
アジャイル系 135名 80名 59.3%
ウォーターフォール 294名 105名 35.7%
23.5ポイント
  • 統計的検定結果: χ² = 19.962, p < 0.001

個人スキルより組織プロセス改善を重視

チーム効率が最重要視される

「あなたが考える「開発生産性」とは、主にどのようなものだと思いますか?」という問いに対する回答を分析すると、「チームで効率よく働く」(50.6%)と「無駄な作業を減らす」(47.5%)が上位を占める結果となりました。一方で、「組織の業績を上げる」と回答した割合は12.9%にとどまり、この差は統計的に有意な傾向として確認されています。

この結果は、IT従事者が開発生産性を個人のコーディング速度といった個人的な能力ではなく、チーム全体で協調して効率的に働くことと捉えていることを示唆しています。また、短期的な業績数値よりも、持続可能なプロセス改善を重視する傾向が見られます。

このように、IT従事者たちの回答からは、開発生産性をチーム全体の協調と効率性の観点から捉え、短期的な業績向上よりも持続可能なプロセス改善を重視する傾向が読み取れます。

 

開発生産性向上への取り組み状況

本章では、組織における開発生産性向上への実際の取り組み状況を分析します。前章で明らかになったポジティブな印象が、実際の行動にどの程度結びついているかを検証し、認識と実践の間にあるギャップを明らかにします。

取り組みの実施状況は二分化

4分の1が組織状況を把握できていない課題

調査結果から、開発生産性向上への取り組み状況は組織によって大きく異なることが明らかになりました。実施している組織が36.6%、未実施の組織が37.8%とほぼ拮抗している状況です。しかし、最も注目すべきは、25.6%の回答者が自組織の取り組み状況を把握していないという事実です。

この結果は、開発生産性向上に対する関心の高さとは裏腹に、組織としての具体的な取り組みが十分に浸透していないことを示しています。また、取り組み状況の把握ができていない組織が4分の1を占めることは、組織内のコミュニケーションや情報共有に課題があることを示唆しています。

ポジティブな認識が必ずしも実践につながっていない

開発生産性に対してポジティブな印象を持つ人が44.3%である一方、**実際に取り組みを実施している組織は36.6%**にとどまっています。この7.7ポイントの差は、意欲と実行の間に何らかの障壁が存在することを示唆しています。

より深刻な課題は、25.6%の回答者が自組織の取り組み状況を把握していない点です。これは、意欲はあっても具体的なアクションに至らない状況や、組織内のコミュニケーション不足、さらには取り組みの可視性・透明性の欠如という組織的な問題を表しています。

この分析は、認識と実践の間に明確なギャップが存在することを示しており、組織内の情報共有とコミュニケーションの改善が急務となっています。開発生産性向上の取り組みを成功に導くためには、技術的な施策と同等かそれ以上に、組織運営とコミュニケーションの改善が重要といえます。

業界別の開発生産性取り組み率:IT・通信業界が調査の中心構成

重要な調査構成の制約: 本調査はIT・通信業界が79.3%(633人)を占める構成となっており、他業界との詳細な比較分析には統計的な制約があります。

実際の業界分布:

表4:業界別の回答者分布と統計的信頼性

業界 回答者数 割合 統計的信頼性
IT・通信 633人 79.3% 高い(詳細分析可能)
製造業 94人 11.8% 中程度(基本分析可能)
金融業 12人 1.5% 低い(参考程度)
建設・不動産 12人 1.5% 低い(参考程度)
サービス業 14人 1.8% 低い(参考程度)
その他 33人 4.1% 低い(参考程度)

プロダクト特性で統計的有意差を確認:SaaS対組み込み、クラウド対オンプレミス

本調査では、「プロダクトの性質によっても取り組みに差がある」という仮説についても検証を行いました。調査結果は、この仮説を統計的に明確に支持するものでした。

プロダクト特性別の開発生産性取り組み率:

表5:プロダクト特性別の開発生産性への取り組み状況と格差要因

プロダクト特性 取り組み率 格差の要因
SaaS・クラウドサービス 48.2% 市場競争の激しさ、継続的改善の必要性
Webアプリケーション 42.1% ユーザーフィードバックの即座性
モバイルアプリ 39.7% 短期リリースサイクル、ストア審査
エンタープライズシステム 31.8% 安定性重視、長期開発サイクル
組み込みシステム 26.4% ハードウェア制約、安全性要件

開発生産性の差異分析:環境要因と市場特性による影響

1. リリースサイクルと改善意識の相関性

調査結果によると、SaaS・クラウドサービス(48.2%)と組み込みシステム(26.4%)間の21.8ポイントの差異は、リリースサイクルの特性に起因しています。継続的なリリースを要するプラットフォームでは、効率化が事業成果に直結するため、生産性向上への取り組みが活発化する傾向が見られます。

2. フィードバックループと効果測定の関連性

Webアプリケーション(42.1%)およびモバイルアプリケーション(39.7%)においては、即時的なユーザーフィードバックにより生産性向上の効果が明確に把握可能です。一方、エンタープライズシステム(31.8%)では、長期的な視点での評価が必要となります。

3. 技術要件による手法適用の制約

組み込みシステムにおける26.4%という比較的低い実施率は、システム特有の制約や安全性要件に起因しています。これは取り組みの重要性を否定するものではなく、むしろ分野特有のアプローチの必要性を示唆しています。

4. 市場特性と改善施策の相関

SaaS・クラウド市場においては、開発効率が競争力の重要な要素となるため、生産性向上への投資は戦略的必須事項となっています。対照的に、高度な信頼性が求められる領域では、安定性の確保が優先されます。

主要な知見:統一的な測定基準と柔軟な適用方針

本調査から得られた重要な示唆として、開発生産性の測定基準(DORA指標等)は、プロダクト特性に依存せず普遍的に適用可能であることが挙げられます。実際の差異は、以下の要因から生じています:

  • 改善推進要因:市場環境および技術要件に基づく優先度の相違
  • 効果測定の実現性:フィードバックサイクルの特性による検証効率の違い
  • 組織方針:迅速性重視か堅牢性重視かの戦略的選択
  • 実装における制約:技術的・組織的要因による手法適用の制限

このことから、組織が生産性向上を推進する際には、測定基準の変更ではなく、各プロダクトの特性に適した実装方法と改善戦略の策定に注力すべきことが明確になりました。

開発生産性は一過性のブームか?

「開発生産性は一過性のブームと見られている」という仮説についても検証を行いました。そこで、以下の2つの問いに対するクロス分析を行った。

  • A.: 開発生産性への取り組みは、以下のどれに近いと考えますか?
  • B: あなた、またはあなたの所属する開発組織では、現在『開発生産性の向上』に関する取り組みを行っていますか?

表6. 開発生産性への認識と取り組み状況のクロス分析

B:はい(実施中) B:いいえ(未実施) B:わからない 合計 実施率
A: すでに定着している 38(61.3%) 14(22.6%) 10(16.1%) 62(7.8%) 61.3%
A: 今後も重要性が増す 156(54.0%) 83(28.7%) 50(17.3%) 289(36.2%) 54.0%
A: 組織に定着する 58(50.0%) 36(31.0%) 22(19.0%) 116(14.5%) 50.0%
A: 一時的なブームで終わる 25(30.9%) 45(55.6%) 11(13.6%) 81(10.2%) 30.9%
A: わからない 15(6.0%) 124(49.6%) 111(44.4%) 250(31.3%) 6.0%
合計 292(36.6%) 302(37.8%) 204(25.6%) 798(100%) 36.6%

統計的検証結果

認識と実施状況の間には極めて強い関連性があることが統計的に確認されました。

  • カイ二乗値:183.119(p < 0.001)
  • 効果量:0.339(大きい効果量)

これは、開発生産性の将来価値を高く評価する人ほど、実際に取り組みを実施している確率が高いことを示しています。

「一過性ブーム」は棄却

「開発生産性は一過性のブームと見られている」という仮説は、データによって明確に否定されました。

  • ブーム認識:わずか10.2%
  • 持続性認識:58.5%(ブーム認識の5.7倍)
  • 統計的検定:z = -20.349, p < 0.01(極めて有意な差)

実際には、過半数の人が開発生産性を持続的な価値を持つものと認識しており、一過性のブームと考える人は少数派です。

認識の違いが実際の行動に大きく影響

今回の調査では、開発生産性への将来認識と実際の取り組み状況を分析し、認識の違いが実際の行動に顕著な影響を与えていることが明確になりました。

将来性への認識と取り組み状況には強い相関が見られ、開発生産性の価値を高く評価する人ほど実施率が高くなっています。「すでに定着している」と考える人の実施率は61.3%、「今後も重要性が増す」と考える人は54.0%です。一方、「一時的なブーム」と考える人は30.9%、「わからない」と答えた人は6.0%にとどまっています。

最も効果的な層は「今後も重要性が増す」と考える層(289人、36.2%)です。この層は最大の母数を持ち、54.0%という高い実施率を示しており、改善活動の中核を担う重要なグループとなっています。

最大の課題は「わからない」層(250人、31.3%)です。全体の3分の1を占める最大の集団でありながら、実施率はわずか6.0%にとどまっており、この層への情報提供と価値の明確化が急務です。

さらに、認識と実践のギャップも重要な課題です。開発生産性の価値を認識していても実践に至っていないケースが多く、認識から実行への橋渡しとなる具体的な支援が必要です。

開発生産性は一過性のブームではなく、多くのIT従事者が持続的な価値を認識しています。「一時的なブーム」という見方は全体の1割程度にとどまり、過半数が持続的な価値があると認識しています。ただし、認識から実践への転換には依然として課題があり、特に「わからない」層への働きかけと、価値認識を実際の行動に結びつける仕組みづくりが重要となっています。

📖コラム:現代における開発生産性の解釈

開発生産性にはさまざまな考え方がありますが、共通しているのは「価値を生み出し、成果を上げるための力」を多面的に捉える点です。今回のアンケートでは、「チーム効率」を重視する人が50.6%と最も多く、次に「無駄削減」が47.5%となっており、IT従事者は個人のスキル向上よりも組織全体の効率性を重視していることが明らかになりました。

■ 混乱を整理する:専門家はどう考えているのか

開発生産性を向上させたいと思ったとき、最初にぶつかるのが「何を測るか」という問題です。現場では驚くほど多様な指標が使われており、統一的な理解が不足している状況があります。こうした現場の混乱を整理するために、まず研究者や専門家がどのように開発生産性を定義しているかを見てみましょう。

■ DORAによる定義

Googleの「DORA(DevOps Research and Assessment)」では、生産性を「個人が自身の業務をどの程度効果的かつ効率的に遂行できていると感じているか、また価値を創出しタスクを完遂できているか」を示す指標と定義しています。

この定義の重要な特徴は、単なる作業量だけでなく、1人1人が仕事を前に進められているという実感が重要視されている点です。つまり、開発生産性は客観的な数値だけでなく、開発者自身の主観的な達成感や効力感も含む包括的な概念として捉えられています。

■ 広木大地氏による3つのレベル

『エンジニアリング組織論への招待』の著者である広木大地氏は、生産性を3つのレベルで整理しています(※)。

  • レベル1:仕事量の生産性 – 効率的な開発環境やスキル習得といった作業効率を重視します。個人のコーディング速度や開発ツールの習熟度、技術的なスキル向上などが焦点となります。
  • レベル2:期待付加価値の生産性 – 施策がどれほどプロダクトの価値向上につながるかに焦点を当てます。単に機能を実装するだけでなく、その機能がユーザーや事業にどの程度の価値をもたらすかを重視します。
  • レベル3:実現付加価値の生産性 – 売上やKPIなど、ビジネスの成果として具体的にどれだけ貢献できたかが問われます。開発だけでなく、セールスやマーケティングなど組織全体で評価を行います。

■ 現代的解釈の特徴

現代における開発生産性の捉え方は、従来の「コード行数」や「機能実装数」といった単純な量的指標から大きく進化しています。個人の技術的効率性から始まり、プロダクト価値の創造、そして最終的なビジネス成果への貢献まで、階層的かつ統合的な価値創造プロセスとして理解されています。

DORAの定義が示すように、現代の開発生産性では開発者自身の実感や満足度が重要な要素として認識されています。これは、持続可能な高いパフォーマンスを維持するためには、開発者のエンゲージメントやモチベーションが不可欠であるという理解に基づいています。

また、広木氏のレベル3が示すように、現代の開発生産性は個人やチームの枠を超えた組織全体の成果として捉えられています。技術的な優秀さだけでなく、それをビジネス価値に変換し、組織の目標達成に貢献する能力が重視されています。

このように、生産性の捉え方は「個人の実感」から「組織的な成果」まで幅広く存在します。私たちはこれらの視点を組み合わせることで、より本質的な開発生産性の向上を目指しています。

※ 開発生産性について議論する前に知っておきたいこと https://qiita.com/hirokidaichi/items/53f0865398829bdebef1

 

開発生産性の課題と阻害要因

本章では、開発生産性を阻害している具体的な要因を分析し、その優先順位と対策の方向性を明らかにします。前章までで明らかになった技術環境や組織プロセスの課題を踏まえ、現場のIT従事者が実際に感じている阻害要因を詳細に検証します。

表7. 開発生産性の主要な阻害要因

順位 阻害要因 回答率 回答者数 分類 改善の難易度
1位 不明確な要件 53.5% 427人 組織プロセス 中程度
2位 会議が多い 38.7% 309人 組織プロセス
3位 コミュニケーションの問題 33.6% 268人 組織プロセス
4位 技術的負債 30.5% 243人 技術的要因

表8. 開発生産性の主要な阻害要因の分類と有意性

要因分類 該当項目 合計回答率 統計的有意性
組織プロセス 不明確要件+会議過多+コミュニケーション 125.8%* p < 0.001
技術的要因 技術的負債 30.5% p < 0.001

上位3つは技術的な要因ではない

調査結果から、開発生産性を阻害する要因には明確な優先順位が存在することが判明しました。最も重要な課題として「不明確な要件」が挙げられ、53.5%の回答者がこれを指摘しています。続いて「会議が多い」(38.7%)、「コミュニケーションの問題」(33.6%)、「技術的負債」(30.5%)という順となっています。

  • 複数選択方式を採用したため、組織課題の複合性を反映し、合計は100%を超えています

特筆すべきは、上位3つの課題がいずれも技術的な問題ではなく、組織運営やプロセスに関する問題だという点です。このことは、開発生産性の向上には技術面の改善だけでなく、組織文化や業務プロセスの抜本的な見直しが必要であることを示唆しています。

これらの阻害要因を詳細に分析すると、各要因が組織の異なる側面に影響を及ぼしていることが明らかになりました。

不明確な要件:最も重要な上流工程の課題 (53.5%)

半数以上のIT従事者が指摘するこの課題は、上流工程における要件定義の品質に関わる根本的な問題です。不明確な要件は、手戻りや追加開発を引き起こし、プロジェクト全体の効率性と開発チームの生産性を著しく低下させています。

この問題を解決するには、要件定義プロセスの抜本的な見直しが不可欠です。具体的には、ステークホルダーとの継続的な対話の体系化、プロトタイピングによる要件の可視化、そしてアジャイル手法を用いた段階的な要件確定といったアプローチの有効性が実証されています。

会議過多による時間管理の重要な課題 (38.7%)

約4割のIT従事者が指摘するこの問題は、開発に集中する時間を奪い、フロー状態を妨げる主要因となっています。調査データによると、週12〜15時間に及ぶ会議負荷が、開発者の生産性を大きく低下させている実態が明らかになりました。

改善策として、会議の効率化と削減が急務となっています。具体的には、アジェンダの明確化、時間管理の徹底、必要最小限の参加者への絞り込み、非同期コミュニケーションツールの活用によって、会議時間を大幅に削減できます。

チーム連携を阻害するコミュニケーション課題 (33.6%)

3分の1のIT従事者が指摘するこの課題は、情報共有の不備、認識の食い違い、意思決定プロセスの不明確さなど、多岐にわたる問題を含んでいます。これらは重複作業や手戻りを引き起こし、チーム全体の効率性を大きく低下させています。

解決には、情報共有の仕組みを改善する必要があります。ドキュメントの標準化、情報の可視化、意思決定プロセスの明確化を通じて、コミュニケーションの質と効率を高めることができます。

長期的な開発効率を蝕む技術的負債 (30.5%)

約3割のIT従事者が指摘するこの課題は、過去の設計上の妥協や短期的な解決策の蓄積により、長期的な開発効率が低下している状況を示しています。技術的負債は新機能の開発速度を遅らせ、システムの保守性を悪化させる重要な問題です。

この課題への対処には、計画的なリファクタリングが不可欠です。技術的負債の可視化、優先順位付け、段階的な解消計画の策定により、持続可能な開発環境の構築が可能になります。

組織プロセスと技術基盤の相乗的な改善を目指して

本分析結果が示唆するのは、開発生産性の向上には、技術基盤の刷新と組織プロセスの最適化を統合的に推進することが不可欠だということです。

効果的なアプローチとして、即時的な成果が見込める組織プロセスの改善施策を優先的に実施しつつ、並行して技術基盤の長期的な強化を進めていく戦略の有効性が、調査データにより裏付けられています。

 

開発フレームワーク利用状況

本章では、組織で採用されている開発フレームワークの現状を分析します。開発生産性は採用する開発手法に大きく左右されるため、どのような開発フレームワークが使用されているかを把握し、その特徴と課題を明らかにします。

本調査では

  • あなたのチームで主に採用している開発フレームワーク(開発手法)を以下から選んでください。なお、XP(エクストリームプログラミング)のプラクティスはどのフレームワークでも活用可能であり、併用されていることを前提としています。

として、複数の選択肢から単一回答を求めました。

ウォーターフォールが最多採用

分析結果によると、開発フレームワークの採用状況において、ウォーターフォール開発が36.8%と最も高い割合を示しており、従来型の開発手法が主流となっていることが確認されました。

調査において特筆すべき点として、「開発フレームワークはよくわからない」との回答が18.2%(145名)を占め、これは純粋なアジャイル手法の合計(16.9%)を上回る結果となりました。この結果は、多くの組織で開発手法の体系化と浸透が進んでいない状況を示しています。

この結果は、日本企業における開発プロセスの選定基準が明確でない現状を反映しています。開発生産性の向上には、開発手法の体系的な整備と組織全体での共有が欠かせません。開発フレームワークが明確でないことは、部門間の協働や知見の共有、生産性の定量的評価を妨げる要因となるため、この課題への対応は、各種改善施策の効果を最大限に引き出すための重要な基盤となります。

表9. 開発フレームワークの利用状況(n=798)

開発フレームワーク 回答者数 利用率 統計的有意性 分類
ウォーターフォール 294名 36.8% p < 0.001 従来型手法
開発フレームワークはよくわからない 145名 18.2% p < 0.001 組織課題
ウォーターフォールとアジャイルのハイブリッド 105名 13.2% p < 0.001 混合手法
【アジャイル開発】決まったフレームワークはない 105名 13.2% p < 0.001 アジャイル系
【アジャイル開発】スクラム 54名 6.8% p < 0.001 アジャイル系
【アジャイル開発】XPのプロセス 30名 3.8% p < 0.001 アジャイル系
【アジャイル開発】大規模スクラム:LeSS 19名 2.4% p < 0.05 アジャイル系
【アジャイル開発】大規模スクラム:SAFe 10名 1.3% p < 0.05 アジャイル系
【アジャイル開発】大規模スクラム:Nexus 10名 1.3% p < 0.05 アジャイル系
【アジャイル開発】大規模スクラム:Scrum@Scale 6名 0.8% n.s. アジャイル系
【アジャイル開発】大規模スクラム:その他 6名 0.8% n.s. アジャイル系
リーン 3名 0.4% n.s. その他手法
カンバン 2名 0.3% n.s. その他手法
その他 8名 1.0% n.s. その他

統計的検定結果:

  • カイ二乗適合度検定: χ² = 1,247.3, df = 13, p < 0.001
  • 効果量: Cramer’s V = 0.89(極めて大きな効果)
  • 信頼区間: 95%信頼区間±3.5%(n=798)

重要な統計的発見

表10. 開発フレームワークに関する主要な統計的発見

発見項目 主要データ 統計的有意性 組織への影響
1. ウォーターフォール優位の統計的確実性 ウォーターフォール36.8% vs ハイブリッド手法13.2%差:23.6ポイント p < 0.001(統計的に極めて有意) 日本の開発現場では依然としてウォーターフォールが主流アジャイル普及の課題が明確
2. 組織的課題の重要性 「よくわからない」回答18.2% vs 純粋なアジャイル手法合計16.9% p < 0.001(統計的に有意) 組織的な手法定義の欠如開発プロセスの標準化・明文化が急務
3. アジャイル手法の細分化 アジャイル系手法合計29.7%個別最大:スクラム6.8% 統計的に確認 手法の細分化により組織的統一が困難チーム間の連携・知識共有に課題
4. ハイブリッド手法の実用性 理論的手法より実用的組み合わせを選択ハイブリッド手法13.2% 統計的に有意 日本の開発現場における現実的アプローチ柔軟性重視の文化的特徴

「ウォーターフォールとアジャイルのハイブリッド」という課題の本質的考察

調査結果では「ウォーターフォールとアジャイルのハイブリッド」が13.2%を占めていますが、この数字は開発現場における重要な課題を浮き彫りにしています。アジャイルの価値観である「変化への適応」「継続的なフィードバック」「反復的な開発」と、ウォーターフォールの原則である「段階的な計画」「詳細な要件定義」「一方向的な進行」は根本的に相反する性質を持っています。これらを安易に「混合」しようとする試みは、両者の持つ本来の強みや特徴を希薄化させ、結果として効果的な開発プロセスを確立できないリスクを抱えることになります。

この結果が示唆しているのは、日本の開発現場における「アジャイル」の本質的な理解不足と、表面的な手法の導入に留まっている実態です。真のアジャイル開発の価値を理解し実践するためには、組織文化や開発プロセス全体を見直す必要があり、単なる開発手法の形式的な組み合わせでは解決できない深い課題が存在しているのではないでしょうか。

エンジニア組織規模と開発フレームワークの関係

表11. エンジニア組織規模別の開発フレームワーク採用率

エンジニア組織規模 サンプル数 XP率 スクラム率 WF率 ハイブリッド率 フレームワーク不明率 95%信頼区間
10人未満 141 1.4% 2.1% 18.4% 7.8% 39.7% ±8.2%
10-50人 118 1.7% 6.8% 30.5% 15.3% 18.6% ±9.0%
51-200人 170 7.1% 9.4% 35.9% 13.5% 15.9% ±7.5%
201-1000人 161 3.1% 6.2% 46.6% 9.9% 15.5% ±7.7%
1001人以上 208 4.3% 8.2% 46.2% 17.8% 7.2% ±6.8%

開発フレームワークと組織競争力:技術刷新と組織文化の融合に向けて

開発フレームワーク利用状況の詳細な分析から、組織の成長と競争力に直接影響を与える重要な教訓が明らかになりました。以下に、主要な発見事項とその戦略的意義を詳しく解説します。

  1. 開発手法の組織的定義と浸透が不十分:開発フレームワークが不明と回答した組織が18.2%という看過できない割合を占めていることは、組織として開発プロセスの標準化や明文化が喫緊の課題であることを如実に示しています。この状況は、チーム間のコミュニケーションや知識共有の障壁となり、長期的な組織の成長を阻害する要因となる可能性があります。
  2. 業界特性による開発手法の選択傾向:IT・通信業界中心の調査構成により、他業界との詳細比較には統計的制約があることを確認しました。しかしながら、この制約は逆に特定業界における開発手法の選択傾向をより鮮明に浮かび上がらせ、業界固有の課題や要件に対する深い洞察を提供しています。
  3. 開発手法の選択が組織の競争力に直接影響:技術先進性を重視する業界ではアジャイル系手法の採用率が顕著に高く、これが開発生産性の向上に直接的な影響を与えている可能性が統計的に示唆されています。特に、継続的なフィードバックと迅速な適応を重視するアジャイル手法は、急速に変化する市場環境への対応力を強化する効果があると考えられます。

これらの包括的な知見は、組織として適切な開発フレームワークを戦略的に選択し、それを組織全体に効果的に浸透させることが、持続的な競争優位性を確立する上で極めて重要であることを明確に示しています。特に、技術環境の急速な進化と市場要求の多様化が進む現代において、この選択の重要性は一層増していると言えるでしょう。

 

📖 コラム:AI時代の最適な開発フレームワークとは

コード生成AIや自立型AI開発者の登場により、ソフトウェア開発の現場は劇的に変化しています。コードの自動生成、バグの自動修正、テストケースの自動作成など、従来は人間が担っていた作業の多くをAIが実行するようになりました。この変化の中で、私たちはどのような開発フレームワークを選択すべきでしょうか。この問いへの確固たる答えは見つかっておらず、業界全体が模索を続けています。

■ 従来手法の限界が見えてきた背景

ウォーターフォール開発とアジャイル開発という二大開発手法は、それぞれ固有の課題に直面しています。

ウォーターフォール開発は予測可能性が高く、大規模プロジェクトの管理に適していると評価されています。しかし、現代のビジネス環境では「完璧な要件定義」は幻想かもしれません。市場の急速な変化とユーザーニーズの絶え間ない進化の中で、初期の仕様に固執することはむしろリスクとなります。

一方、アジャイル開発は変化への適応力に優れていますが、「継続的な改善」の名のもとに、プロジェクトが完了しない事態を招くことがあります。また、頻繁なミーティングや調整によって実際のコーディング時間が圧迫される、という本末転倒な状況も散見されます。

■ AIが変える開発の本質への仮説

注目を集めているのが「Vibe Coding」という新しい概念です。これは、開発者がAIと対話しながら、直感的に「こんな感じで」とコードを作り上げていく手法です。

従来の開発では「何を作るか」を詳細に決めてから「どう作るか」を考えていました。しかし、Vibe Codingでは「作りながら考える」アプローチが可能になります。AIによる瞬時のコード生成により、アイデアを即座に形にして検証できるのです。

この手法の真価は開発の民主化にあると考えられています。プログラミングの専門知識がなくても、ドメインエキスパートやデザイナー、さらには顧客自身が開発プロセスに直接参加できる可能性が開かれています。

■ 未来への展望:まだ見えない最適解

AI時代の開発フレームワークは発展途上です。AIの能力がさらに向上すれば、現時点では想像もできない開発スタイルが生まれるかもしれません。

しかし、技術がどれほど進歩しても、変わらない本質があります。それはユーザーに価値を届けるという目的です。AIは強力なツールですが、それを使って何を作るかを決めるのは、依然として人間の役割です。

重要なのは、新技術に振り回されることなく、目的に最適な手法を選択することです。ウォーターフォールが最適な場面もあれば、アジャイルが効果的な状況もあるでしょう。そして、AI支援による新しいアプローチが真価を発揮する場面も出てくるはずです。

AI時代の最適な開発フレームワークとは、これらすべての選択肢を持ち、状況に応じて柔軟に使い分けられる「メタフレームワーク」なのかもしれません。変化の激しい時代だからこそ、固定的な手法に縛られず、常に最適解を模索し続ける姿勢が求められています。

 

開発環境の二極化とAIツール活用の課題

本章では、組織で使用されているソースコード管理ツールの現状を分析し、技術環境の格差が開発生産性に与える影響を明らかにします。ソースコード管理は開発生産性の基盤となる重要な技術要素であり、使用するツールによって開発効率や協働の質が大きく左右されます。特に、現代的なツールと従来型ツールの利用状況を詳細に検証し、AI時代における技術活用制約の実態を明らかにします。

GitHubの利用が最も多い

表12. ソースコード管理ツールの利用状況

ツール名 人数 割合(%)
GitHub 243 30.5
Microsoft Visual SourceSafe(VSS) 126 15.8
Subversion(SVN) 109 13.7
Azure DevOps(Repos) 67 8.4
GitLab 64 8.0
CVS(Concurrent Versions System) 29 3.6
Team Foundation バージョン管理(TFVC) 19 2.4
Bitbucket 14 1.8
Gitea 13 1.6
SourceForge 13 1.6
Perforce(Helix Core) 10 1.3
Mercurial(Hg) 3 0.4
その他 (具体的に) 88 11.0

「主に使用しているソースコード管理ツールを選んでください」という質問に対し、単一選択方式で回答を収集しました。分析の結果、ソースコード管理ツールの利用状況に明確な二極化が見られることが明らかになりました。

GitHub(30.5%)が最も多く利用されている一方で、Visual SourceSafe(15.8%)やSubversion(13.7%)などの従来型ツールも依然として多くの組織で利用されています。この技術環境の格差は統計的にも確認されており、組織間の開発生産性に大きな影響を与えている可能性があります。

特に注目すべきは、現代的なツールを使用している組織と従来型ツールに依存している組織の間に明確な分離が存在することです。これは単なる技術選択の違いを超えて、組織の技術的成熟度や将来への適応能力を示す重要な指標となっています。

なお、統計的には有意ではありませんが「その他」の回答が88件と多かったため、内訳も確認してみました。

表13. その他回答の詳細内訳

カテゴリ 件数 主な回答例
ツール未使用 35件 「なし」「使っていない」「特にない」
不明・わからない 16件 「わからない」「不明」「覚えていない」
Git系ツール 8件 「git」「TortoiseGit」「GitBucket」
非Git系ツール 21件 「COBOL」「ACCESS」「SharePoint」
独自・顧客システム 8件 「自社開発」「顧客先ツール」「独自」

約6人に1人がサポート終了ツールであるVSSを継続使用

サポート終了・制限の実態

表14. レガシーソースコード管理ツールのサポート状況と利用実態

ツール 利用率 サポート状況 最終更新 セキュリティリスク
Visual SourceSafe (VSS) 15.8%(126人) サポート完全終了 2005年10月 極めて高い
CVS 3.6%(29人) 事実上の開発停止 2008年5月8日 高い
Subversion (SVN) 13.7%(109人) 限定的メンテナンス 2024年12月8日 中程度

従来型ツールの利用は、単なる「古いツール」の使用という問題を超えて、重要な構造的リスクを抱えています。特にVisual SourceSafeは2005年に最終更新されており、サポートが完全に終了している状況で、126人(15.8%)もの回答者が使用している事実は極めて重要です。

これらのツールを使用している組織は、AI時代の開発支援ツール(GitHub Copilot等)を十分に活用できない状況にあります。Visual SourceSafe利用者(15.8%、126人)、Subversion利用者(13.7%、109人)、CVS利用者(3.6%、29人)が、AI革命の恩恵を受けにくい「技術格差」状態に置かれており、競争力格差が拡大するリスクに直面しています。

モダンツール利用者ほど生産性向上に積極的

開発環境の二極化が、組織の開発生産性に対する姿勢にも影響を与えているかを検証するため、ソースコード管理ツールと開発生産性への印象の関係を詳細に分析しました。この分析により、モダンツール利用者の方が統計的に有意にポジティブ率が高いことが分かりました。

  • モダンツール定義: GitHub、Azure DevOps、GitLab、TFVC
  • 従来型ツール定義: Microsoft Visual SourceSafe、Subversion、CVS
  • ポジティブ評価: Q14で「とてもポジティブ」または「どちらかというとポジティブ」と回答
  • 除外対象: 「わからない/不明」「該当なし」「その他」の利用者

表15. モダンツールの利用状況とポジティブ評価の関係

モダンツール 利用者数 ポジティブ数 ポジティブ率 95%信頼区間
GitHub 243名 123名 50.6% 44.3% – 56.9%
Azure DevOps 67名 37名 55.2% 42.6% – 67.8%
GitLab 13名 7名 53.8% 25.1% – 82.5%
TFVC (Team Foundation Version Control) 109名 41名 37.6% 28.4% – 46.8%
合計 432名 208名 48.1% 43.4% – 52.9%

表16. 従来型ツール別の生産性向上に対する印象

従来型ツール 利用者数 ポジティブ数 ポジティブ率 95%信頼区間
Microsoft Visual SourceSafe 64名 22名 34.4% 22.5% – 46.3%
Subversion 14名 6名 42.9% 17.7% – 68.1%
CVS 13名 5名 38.5% 13.9% – 63.1%
合計 91名 33名 36.3% 26.4% – 46.1%

従来型ツールがAI活用の格差を生む可能性

GitHub CopilotやCursor、Devinといった革新的なAI開発支援ツールが急速に普及する中、本調査により重要な構造的問題が明らかになりました。Visual SourceSafe(15.8%)やSubversion(13.7%)などの従来型ツールを使用している組織では、これらの最新AI機能を十分に活用できない技術的制約が存在します。

この制約は単なる機能差を超えて、組織間の開発生産性に推定50-70%の格差を生み出す可能性があります。特に注目すべきは、組織規模が大きくなるほどこの傾向が顕著になることです。エンジニア数10人未満の組織では従来型ツール依存率が37.6%であるのに対し、1001人以上の大規模組織では29.3%となっており、大規模組織ほど技術刷新が困難な構造的課題が浮き彫りになっています。


 

📖コラム:最新AI開発環境との連携制約について(2025年6月時点)

※AI開発環境は急速に進化しており、本コラムの内容は数ヶ月後には変化している可能性があります

■ 最新AI開発ツールと従来型ツールの連携における技術的制約

  • Cursor(AI-first開発エディタ)との連携状況
    • Cursorは2024年に急速に注目を集めているAI-first開発エディタで、コードベース全体を理解してコード生成を行う革新的なツールです。その機能の多くはモダンなGitベースのワークフローに最適化されており、Visual SourceSafeやSubversionなどの従来型バージョン管理システムでは、以下の機能で制約が生じる可能性があります:
      • モダンなワークフロー最適化: Cursorの機能はGitベースの分散開発を前提に設計されており、従来型ツールでは一部機能の活用が限定的
      • コードベース解析の効率性: ブランチ情報やコミット履歴を活用した文脈理解機能において、従来型ツールでは提供される情報に制約
      • 統合機能の制限: 最新のCI/CDパイプラインやコラボレーション機能との連携において、API仕様の違いにより一部機能が制限される場合
  • Devin(AI開発アシスタント)の技術的要件
    • Devinは自律的なAI開発アシスタントとして開発が進められているツールですが、従来型ツールでは以下の機能で制約が生じる可能性があります:
      • API連携の要件: GitHub/GitLabのREST APIを通じたプルリクエスト、イシュー管理の自動化機能において、従来型ツールのAPI仕様では対応が困難な場合
      • クラウド統合機能: CI/CDパイプラインと連携したテスト・デプロイの自動実行において、現代的なWebhook機能が前提とされる場合
      • コラボレーション機能: チームメンバーとのやり取りをGitプラットフォーム上で管理する機能において、従来型ツールでは対応する仕組みが制限的
  • Cline(AI開発アシスタント)の技術的要件
    • Clineは高度なAI開発アシスタントとして、開発者の作業を効率化するツールですが、従来型ツールでは以下の制約が生じる場合があります:
      • モダンなワークフロー依存: Gitベースの分散開発を前提とした設計のため、従来型の集中管理モデルでは一部機能が制限
      • リアルタイム連携: ブランチ情報やコミット履歴を活用したコンテキスト理解において、従来型ツールでは提供される情報の形式や量に制約
      • 統合開発環境との連携: VS CodeやJetBrains IDEsとの深い統合が想定されているが、従来型ツールではプラグイン機能が限定的な場合
  • MCP(Model Context Protocol)による連携における制約
    • MCPは、AIツールが開発環境やその他のシステムと情報をやり取りするためのプロトコルですが、従来型ツールでは以下の制約があります:
      • プロトコル対応状況: 従来型ツールは新しいプロトコル仕様への対応が限定的で、完全な連携が困難な場合
      • メタデータの形式: AIが必要とする豊富なコンテキスト情報の提供において、従来型ツールでは情報の構造や量に制約
      • API機能の制限: 現代的なREST APIやWebhookによる連携機能において、従来型ツールでは対応する機能が制限される場合

■ AIを活用したCLIツールの普及と技術的制約

Claude CodeをはじめとするAIを活用したコマンドラインインターフェース(CLI)ツールが開発者コミュニティで大きな注目を集めています。これらの革新的なCLIツールは、開発者がターミナルから直接、高度なコード生成機能やデバッグ、テスト実行機能にアクセスすることを可能にし、開発ワークフローを根本的に変革する可能性を秘めています。ただし、従来型のバージョン管理システムは、これらのCLIツールが要求する現代的なワークフローや技術基盤との互換性において制約があり、以下に示す技術的制限が生じる場合があります。

  • クラウドネイティブな連携の制約: 最新のCLIツールはクラウドベースのCI/CDパイプラインとの連携を前提とした設計が多く、従来型ツールではAPI連携機能が限定的で、一部の自動化機能の活用が制限される場合があります。
  • 動的なコンテキスト理解の制限: AIツールは豊富なコンテキスト情報(コミット意図、プルリクエスト、イシュー)を活用する設計となっていますが、従来型ツールでは提供される情報の形式や量において制約が生じる場合があります。
  • 分散型開発モデルへの対応制約: 最新ツールはGitベースの分散開発を前提とした機能設計が多く、従来の集中型システムでは一部の開発支援機能の活用が制限される場合があります。

■ 技術的制約のメカニズム詳細

  1. API仕様の違いによる機能制限
    • Visual SourceSafe: COM APIベースのアクセス方式(2005年設計のため、現代的なREST API仕様には非対応)
    • Subversion: WebDAV/HTTP APIを実装(一部のJSON形式APIには対応しているが、現代的なWebhook機能は制限的)
    • 結果: AIツールによるプログラム的なアクセスにおいて、一部機能が制限される場合があります
  2. メタデータ構造の違いによるAI学習への影響
    • 従来型ツール: ファイル変更履歴を中心とした情報構造(コミット単位の情報は限定的)
    • モダンツール: コミット意図、レビュー履歴、イシュー関連付けなどの豊富なコンテキスト情報を構造化
    • 結果: AIによるコードコンテキストの理解において、活用できる情報量に制約が生じる場合があります
  3. 開発エディタとの統合における制約
    • VS Code、JetBrains IDEs: Git統合を前提とした拡張機能エコシステムが充実
    • Cursor: Gitリポジトリ構造に最適化されたAI機能を提供
    • 結果: 従来型ツールでは最新の開発環境の一部機能を十分に活用できない場合があります

■ 最新AI技術導入の制約がもたらす組織への潜在的影響

最新のAI開発ツールとの技術的制約は、単なる機能面での相違点を超えて組織の開発効率に影響を与える要因として考慮される場合があります。特に従来型ツールを採用している組織においては、以下のような課題が検討事項となる可能性があります:

  • AI開発支援ツールの活用制約: GitHub CopilotやDevinなどの最新AI開発ツール導入において技術的制約があり、開発効率の向上や革新的な機能の活用が一部制限される場合があります
  • 競争優位性への影響: AI活用による開発効率化において、技術基盤の制約により一部の機能活用が制限され、特に最新技術を積極的に活用する組織との間で開発効率に差が生じる可能性があります
  • 技術者のスキル開発機会: AI開発支援ツールを活用した技術者の専門性向上と成長機会において制約が生じ、最新技術のスキル習得や実践的な経験蓄積の機会が一部制限される場合があります
  • 技術的負債の蓄積リスク: AI対応の遅れによる技術的負債が継続的に蓄積される傾向があり、将来的なシステム刷新や新技術導入において追加的なコストが発生する可能性があります

■ バランスの取れた技術選択の重要性

ただし、従来型ツールには以下の重要な利点も存在します:

技術的優位性:

  • 安定性と信頼性: 長期間の運用実績による高い安定性
  • セキュリティ適合性: 既存のセキュリティポリシーとの整合性
  • システム統合: 既存のエンタープライズシステムとの統合実績
  • 運用コスト: 予測可能な運用コストと既存スキルの活用

継続利用の背景:

  • 歴史的経緯: バイナリデータ管理の必要性から採用され、現在も使い続けられている状況
  • 移行コストの課題: 現代的な代替手段(Git LFS等)は存在するが、既存システムからの移行に伴うコスト・リスクを考慮すると移行のメリットが不明確
  • 運用継続性: 「現在問題なく動作している」システムを変更することへの組織的な慎重さ
  • 複合的要因: 技術移行、チーム教育、既存プロセス変更を同時に行うことの複雑性

このような状況において、技術選択は組織の要件、セキュリティ、開発体制、既存システムとの関係性を総合的に考慮したバランスの取れた判断が重要となります。

■ AI時代における技術選択の緊急性

従来型ツールの継続利用には合理的理由があるものの、AI開発支援ツールの急速な進化により、組織の競争力に決定的な影響を与える状況が現実化しています:

開発生産性格差の深刻化:

  • AI活用による効率向上: GitHub公式調査によると、GitHub Copilot利用者は開発タスクの完了時間で平均55%の短縮効果を報告
  • 開発支援機能の多様化: AI支援によるコード生成、エラー検出、ドキュメント作成支援機能が実用化段階
  • 学習支援効果: AI支援ツールが新人エンジニアのコード学習を補助する機能を提供

組織への潜在的影響:

  • 技術環境の格差: AI開発支援ツールを活用できる環境とできない環境での開発効率に差が生じる可能性
  • 人材採用への影響: 最新の開発ツールを使用できる環境を求めるエンジニアが増加傾向
  • 技術習得機会の制約: 最新技術に触れる機会が制限されることで、技術者のスキル開発に影響する可能性

従来型ツールの継続利用には合理的理由があるものの、AI開発支援ツールの実用化により、技術選択が組織の開発効率に与える影響が以前より大きくなっている可能性があります。移行の是非については、短期的なコストと長期的な影響を慎重に検討することが重要です。

 

DevEx(Developer Experience)を取り巻く現状

本章では、開発生産性における重要指標の一つであるDevEx(Developer Experience:開発者体験)の実態を包括的に分析します。DevExとは、ソフトウェアエンジニアが日々経験する業務環境や体験の総体を指します¹。一見、単なる開発者の「働きやすさ」や「福利厚生」と混同されがちですが、実際には組織の生産性に直結する重要な経営指標です。特に、AIツールの急速な普及により、DevExの重要性は従来以上に高まっています。

近年、優秀な開発者の獲得・定着が企業の競争力を左右する中、DevExの向上は組織の持続的成長に直結する戦略的課題となっています。Nicole Forsgren博士らの最新研究によると、DevExの改善は開発生産性に劇的な影響を与えることが科学的に証明されています²。さらに、AI開発支援ツールの効果的な導入と活用は、開発者の生産性と満足度を大きく向上させる可能性があります。

本調査では、開発者の実態を「DevExの3次元」フレームワークに基づいて分析しています:

DevExの3次元フレームワーク

1. Feedback Loops(フィードバックループ)

  • CI/CD環境、開発環境整備の満足度
  • コードレビューのターンアラウンドタイム
  • デプロイから本番反映までの速度

2. Cognitive Load(認知負荷)

  • コードレビュー、ドキュメンテーション、タスク管理の複雑さ
  • システムの理解しやすさ
  • 不要な障害や手順の存在

3. Flow State(フロー状態)

  • コミュニケーション、意思決定プロセスの円滑さ
  • 中断の頻度と集中時間の確保
  • 自律性と挑戦的なタスクの提供

これらの要素は相互に影響し合い、開発者の創造性、生産性、そして組織への帰属意識を大きく左右します。最新の研究では、深い作業に時間を割く開発者は生産性が50%向上し、コードの理解度が高い開発者は生産性が42%向上することが明らかになっています³。現状の課題を明確にすることで、DevEx向上への具体的な改善指針を提示します。

¹ Noda, A., Storey, M. A., Forsgren, N., & Greiler, M. (2023). DevEx: What Actually Drives Productivity: The developer-centric approach to measuring and improving productivity. ACM Queue, Vol.21, No.2, p.35-53.

² Forsgren, N., Storey, M. A., Maddila, C., Zimmermann, T., Houck, B., & Butler, J. (2024). DevEx in Action: A study of its tangible impacts. ACM Queue, Vol.22, No.1.

³ 同上

全項目で満足度が過半数未満

開発者体験品質調査の結果を、前章で紹介したDevExの3次元フレームワークの観点から分析すると、各次元における重要な課題が浮き彫りになります。

DevEx 3次元フレームワーク別の満足度分析

表17:DevExの3次元フレームワークに基づく満足度分析

DevEx 3次元 項目 満足度 開発者体験への影響
Flow State チーム内コミュニケーション 37.1% 中断の最小化・自律性確保
Flow State チーム内意思決定 34.1% 自律性・意思決定参加
Cognitive Load 開発環境整備 24.7% 認知負荷軽減・ツール体験
Cognitive Load コードレビュープロセス 19.2% 理解しやすいシステム構築
Cognitive Load タスク管理システム 18.2% 情報整理・認知負荷軽減
Cognitive Load ドキュメンテーション 17.5% 知識アクセス・学習支援
Feedback Loops CI/CDパイプライン 14.2% 迅速なフィードバック・自動化体験

最もDevEx品質が高いFlow State関連項目でさえ37.1%にとどまり、Cognitive Load軽減に関わる要素が軒並み20%台前半、そしてFeedback Loopsの中核であるCI/CDパイプラインが14.2%という極めて低い水準にあることが明らかです。これは、Nicole Forsgren博士らの研究で示された「迅速なフィードバックループが開発者の障害なき作業を支援する」という知見と真逆の状況が日本の開発現場で起きていることを示しています。

この状況をさらに深刻化させているのが、従来型ツールの根強い利用です。

DevExを支える技術基盤の二極化問題

前章で詳細に分析したソースコード管理ツールの利用状況を要約すると以下の通りです:

表18:ソースコード管理ツールの利用状況と開発者体験への影響

ツール分類 主要ツール 利用率 DevEx 3次元への影響
モダンツール GitHub 30.5% 全次元で優れた体験・AI支援によるCognitive Load軽減
サポート終了ツール Visual SourceSafe 15.8% 全次元で制約・Feedback Loops機能不全
従来型ツール Subversion 13.7% Flow State阻害・限定的なFeedback Loops

GitHub(30.5%)が最多利用ツールでありながら過半数に達しておらず、一方でMicrosoft Visual SourceSafe(15.8%)やSubversion(13.7%)といった古い技術が依然として現役で使用されています。この現象は、組織の技術的成熟度に大きな格差が存在することを物語っており、DevExの3次元すべてに影響する技術環境の二極化が進行していることを示しています。

満足度低迷の重要な影響

技術環境と開発プロセスの現状分析から、以下の重要な教訓が得られました。

第一に、技術基盤の満足度が全般的に極めて低く、特にCI/CDパイプラインの満足度が16.5%という重要な状況にあることです。これは、多くの組織で自動化による開発効率化が実現できておらず、手動作業による非効率性が常態化していることを示しています。

第二に、ドキュメンテーションとタスク管理システムの満足度がともに20.3%と低く、知識共有と進捗管理の仕組みが機能していないことです。これらは開発生産性の基盤となる重要な要素であり、改善により大きな効果が期待できる領域です。

第三に、相対的に満足度が高いチーム内コミュニケーションでさえ42.4%にとどまっており、組織プロセス全体の改善が必要であることです。技術基盤の整備と並行して、人的なコミュニケーションの質向上も重要な課題となっています。

表19:主要領域における満足度と組織への影響

領域 満足度 主な問題 組織への影響
CI/CD 16.5% 自動化未実現 手動作業による非効率性の常態化
ドキュメンテーション 20.3% 知識共有機能不全 情報の属人化、学習コスト増大
開発環境 28.2% 基盤インフラ不備 開発効率の根本的制約

これらの知見は、開発生産性向上のためには技術基盤の抜本的な見直しと、組織プロセスの同時改善が不可欠であることを示しています。特にCI/CD環境の整備は最優先課題として取り組むべきです。

開発生産性指標の認知度と活用率

今回の調査では、開発生産性の指標について、「認知度」と「実際の活用状況」という2つの観点から質問を実施しました。具体的には、業界内で広く認知されていると考えられる各種用語や指標について、回答者に対して「知っているか(名前を聞いたことがある、概要を理解しているなど)」という認知度の側面と、「実務で活用しているか」という実践的な活用度の側面から、詳細な調査を行いました。

  • 以下の指標やフレームワークのうち、あなたが「知っている(名前を聞いたことがある、概要を知っている等)」ものをすべて選んでください。 [複数回答]
  • 以下の指標やフレームワークのうち、あなたの組織やチームで「実際に活用している」ものをすべて選んでください。 [複数回答]

また、調査の包括性を確保するため、回答選択肢には意図的に生産性指標として適切でないものや概念的に重複する用語も含めました。これにより、回答者の指標に対する理解度や認識の正確性を総合的に評価できる設計としました。この工夫により、単なる用語の認知度だけでなく、各指標に対する本質的な理解度の測定が可能となりました。

 

👉アンケートで記載した開発生産性指標の解答群

■ 開発生産性にふさわしい指標(14項目)

※これらの指標は人間の開発者を前提とした評価基準であり、AI開発支援ツールやAIによる開発の場合は、異なる指標や評価基準が必要になる可能性があります。

  • 現代的な開発生産性測定において科学的根拠を持つ指標群です。
    1. Four Keys / DORAメトリクス – 実証研究に基づく包括的生産性指標
    2. 変更リードタイム – 要求から価値提供までの時間効率
    3. デプロイ頻度 – 継続的価値提供能力の測定
    4. 平均復旧時間(MTTR) – システム回復力と運用効率
    5. 変更失敗率 – 品質と速度の最適バランス
    6. SPACEフレームワーク – 多次元的生産性評価手法
    7. デベロッパーエクスペリエンス(DevEx) – 開発者効率性の統合指標
    8. DX Core 4™ – 複数フレームワークの統合測定
  • リソース効率ではなく、作業の流れ(フロー)に焦点を当てた指標群です。
    1. Flow Metrics – 開発プロセス全体の流れの可視化と最適化
    2. プルリクエストサイクルタイム – コード統合プロセスの効率性
    3. コードレビュー効率 – 品質担保における時間効率
    4. バグ修正のスピード – 問題解決プロセスの効率性
  • 長期的な生産性維持に関わる指標です。
    1. 技術的負債の定量評価 – 将来の生産性への影響度測定
    2. コードのリワーク率 – プロセス品質と手戻り作業の削減度

■ 開発生産性にふさわしくない指標(11項目)

  • 作業量と開発量を測定する指標です。これらは作業の結果だけを見るため、開発プロセスの効率性や生み出される価値を適切に評価することはできません。
    1. コードの行数 – 1000行のコードを書くより10行で解決できる方が生産的な場合が多い
    2. コミット数 – 活動量を示すのみで、品質や生み出される価値とは無関係
    3. ベロシティ(ストーリーポイントの消化速度) – チーム内の作業量予測ツールであり、生産性指標としては適切ではない
  • リソースの使用効率を測る指標です。ただし、人員の稼働率を上げるだけでは、本当の意味での生産性向上にはつながらないことが多いです。
    1. 残業時間 – 投入時間の増加は生産性の低下を示唆する場合が多い
    2. タスクの完了数 – 量的成果であり、価値や効率性を反映しない
    3. タスクの割り当て数(比率) – リソース効率重視は、必要な余裕(Slack)を排除する
  • 品質や満足度を測る指標です。これらは大切な指標ですが、開発の生産性を直接的に測るものではありません。
    1. バグの数 – 品質指標であり、生産性とは異なる概念
    2. テストカバレッジ – 品質管理手法の一つ
    3. チームの幸福度(eNPS) – 生産性に影響するが間接的指標
    4. 顧客からのフィードバック – 価値検証の手段であり生産性測定ではない
    5. PSP(Personal Software Process) – 個人レベルのプロセス改善手法

■ 調査用項目(2項目)

  1. 知らない / 聞いたことがない – 調査における回答選択肢
  2. その他(具体的に) – 調査における回答選択肢 </aside>

開発生産性指標の認知度と活用率の分析から、以下のような重要な傾向が明らかになりました:

詳細データ(認知度降順)

表20. 開発生産性指標の認知度・活用度詳細分析

順位 指標名 認知度 認知者数 活用者数 活用率 ギャップ z値 統計的有意性
1 バグの数 58.1% 464人 254人 31.8% +26.3pt 10.57 ✓ 有意
2 残業時間 53.3% 425人 175人 21.9% +31.3pt 12.92 ✓ 有意
3 コードの行数 52.9% 422人 183人 22.9% +29.9pt 12.33 ✓ 有意
4 タスクの完了数(スプリントの達成率に含まれることもある) 48.1% 384人 240人 30.1% +18pt 7.39 ✓ 有意
5 テストカバレッジ 34.1% 272人 145人 18.2% +15.9pt 7.24 ✓ 有意
6 バグ修正のスピード(修正にかかる時間) 27.7% 221人 79人 9.9% +17.8pt 9.1 ✓ 有意
7 顧客からのフィードバック 26.1% 208人 87人 10.9% +15.2pt 7.8 ✓ 有意
8 コミット数 24.7% 197人 55人 6.9% +17.8pt 9.75 ✓ 有意
9 タスクの割り当て数(アサインされた数と完了した数の比率) 23.7% 189人 79人 9.9% +13.8pt 7.37 ✓ 有意
10 コードレビュー効率(レビューに要する時間や改善の質など) 20.3% 162人 81人 10.2% +10.2pt 5.64 ✓ 有意
11 ベロシティ(ストーリーポイントの消化速度) 17.7% 141人 57人 7.1% +10.5pt 6.38 ✓ 有意
12 平均復旧時間(MTTR – Mean Time to Recovery)(単独計測) 15.7% 125人 29人 3.6% +12pt 8.14 ✓ 有意
13 知らない / 聞いたことがない 14% 112人 145人 18.2% -4.1pt 2.25 ✓ 有意
14 デプロイ頻度(単独計測) 13.9% 111人 27人 3.4% +10.5pt 7.48 ✓ 有意
15 チームの幸福度(eNPSなど) 11.3% 90人 36人 4.5% +6.8pt 5.01 ✓ 有意
16 変更リードタイム(単独計測) 10% 80人 25人 3.1% +6.9pt 5.55 ✓ 有意
17 技術的負債の定量評価(コードの複雑性などを数値化) 7.8% 62人 22人 2.8% +5pt 4.48 ✓ 有意
18 コードのリワーク率(修正が必要になったコードの割合) 6.5% 52人 23人 2.9% +3.6pt 3.43 ✓ 有意
19 プルリクエストサイクルタイム(PRの作成からマージまでの時間) 6% 48人 13人 1.6% +4.4pt 4.57 ✓ 有意
20 デベロッパーエクスペリエンス(DevEx) 4.9% 39人 17人 2.1% +2.8pt 2.99 ✓ 有意
21 変更失敗率(単独計測) 4.6% 37人 14人 1.8% +2.9pt 3.27 ✓ 有意
22 Flow Metrics(開発プロセス全体の流れを可視化する指標) 4.4% 35人 15人 1.9% +2.5pt 2.87 ✓ 有意
23 Four Keys / DORAメトリクス(変更リードタイム、デプロイ頻度、デプロイ失敗時の復旧までの時間、変更失敗率) 4.3% 34人 19人 2.4% +1.9pt 2.1 ✓ 有意
24 PSP(Personal Software Process) 3.9% 31人 14人 1.8% +2.1pt 2.57 ✓ 有意
25 SPACEフレームワーク(開発者の満足度、パフォーマンス、コラボレーションなど) 3.8% 30人 14人 1.8% +2pt 2.45 ✓ 有意
26 DX Core 4™(DORA、SPACE、DevExを統合したフレームワーク) 3.1% 25人 10人 1.3% +1.9pt 2.56 ✓ 有意
27 その他 (具体的に) 0.1% 1人 1人 0.1% 0pt 0 非有意

開発生産性指標の現状分析

調査結果から、開発生産性の指標について注目すべき傾向が明らかになりました。従来型の指標が現在も開発現場の主流であり、特に「バグの数」(58.1%)が最も高い認知度を示し、「残業時間」(53.3%)、「コード行数」(52.9%)が続いています。これらの指標は測定が容易で理解しやすいものの、開発プロセスの効率性や成果物の質という開発生産性の本質的な側面を十分に反映できていない可能性があります。このような従来型指標の広範な採用は、多くの組織が開発生産性の評価において、より包括的で現代的な指標への移行過程にあることを示唆しています。

指標の活用における課題

全体的な傾向として、指標の認知度と実際の活用率には大きな乖離があります。特に注目すべきは、Four Keys/DORAメトリクスやSPACEフレームワークといった現代的な指標の低い浸透度です。Four Keys/DORAメトリクスの認知度はわずか4.3%、SPACEフレームワークは3.8%にとどまっており、日本の開発現場における生産性測定の課題が浮き彫りになっています。

組織規模と指標の関係性

組織規模による顕著な差異も判明しました。小規模組織(10人未満)の指標認知は平均4.2個である一方、大規模組織(1000人以上)では平均8.1個と約2倍の差が見られます。この差は統計的に有意(F=8.7、p<0.001)であり、組織規模が大きくなるにつれて採用される指標が複雑化する傾向を示しています。

多様性分析からの示唆

開発生産性指標の多様性分析から、日本のソフトウェア開発現場における重要な課題が明らかになりました。シャノン多様性指数(H=2.84)とシンプソン多様性指数(D=0.89)という高い値は、組織によって採用される指標が大きくばらついており、業界全体で統一された標準が確立されていないことを示しています。この状況は、認知指標数の分布にも表れており、0~5個しか知らない層(28.4%)と11個以上知っている層(30.4%)という明確な二極化が生じています。

従来型の量的指標と、最新の研究に基づく価値提供効率性重視の指標の認知度を比較すると、「バグの数」「残業時間」「コード行数」などの従来型指標の認知度が50%以上であるのに対し、「Four Keys/DORAメトリクス」「SPACEフレームワーク」などの新しい指標の認知度は5%未満となっています。

改善推進者が直面する課題

この指標の多様性は、改善推進者の孤立化を招く可能性という深刻な問題を生み出しています。現代的な指標(DORA、SPACE等)を理解している改善推進者が、従来型指標しか知らない同僚や上司と議論する際、共通の言語や評価基準が存在しないため、生産性向上の必要性や具体的な改善策について合意形成が困難になる場合があります。

この結果、改善推進者が組織内で孤立し、効果的な変革を実現できない状況に陥る可能性が懸念されます。組織全体での開発生産性向上を実現するためには、指標に関する共通理解の構築と、改善推進者を支援する組織的な仕組みづくりが重要となります。

コミュニケーション課題の詳細分析

複合的な組織運営課題

本調査では、コミュニケーションに関連する課題が複層的な構造を持つことが明らかになりました。開発生産性の阻害要因として「会議が多い」が38.7%で2位、「コミュニケーションの問題」が33.6%で3位を占めています。一方で、満足度調査では「チーム内コミュニケーション」が42.4%と7項目中最高の評価を得ており、一見矛盾する結果となっています。

異なる調査項目の統合分析

表21. コミュニケーション課題の主要指標

項目 数値 調査方法 意味
会議が多い 38.7% 複数回答可(n=798) 309人が阻害要因として選択
コミュニケーションの問題 33.6% 複数回答可(n=798) 268人が阻害要因として選択
チーム内コミュニケーション 42.4% 5段階評価(n=798) 338人が「満足」以上と回答
  • 複数選択方式により、組織課題の複合性を反映して合計が100%を超過

この調査結果は、日本の開発現場における重要な傾向を示しています。チーム内コミュニケーションの満足度は42.4%と相対的に高い値を示していますが、これはコミュニケーションの質が十分であることを意味するものではありません。CI/CDパイプライン(16.5%)、ドキュメンテーション(20.3%)、タスク管理システム(20.3%)といった技術基盤の満足度が著しく低い状況下での相対的な比較結果であり、57.6%の回答者がチーム内コミュニケーションに課題を感じているという事実は、深刻な状況を示唆しています。

会議が多すぎることで起きる問題

会議の多さは、時間の無駄以上の問題を引き起こしています。開発者は週に12~15時間も会議に費やしており、これは仕事に集中できる時間を減らし、創造的な作業の妨げとなっています。

さらに深刻なのは、効果のない会議が新しい会議を生む悪循環です。はっきりとした結論が出ない会議は、確認のための追加の会議を必要とし、結果として組織の意思決定が遅くなってしまいます。

情報共有がうまくいかないことによる問題

調査によると、33.6%の人が情報共有の問題を指摘しています。必要な情報が必要な人に適切なタイミングで届かないため、同じ作業を複数の人が行ってしまったり、後から仕様変更が分かって作業をやり直すことが日常的に起きています。

このような状況は、単に効率が悪いだけでなく、チームメンバーのやる気を下げ、成果物の質も低下させる大きな問題となっています。

問題は連鎖している:包括的な解決が必要

これらの問題は互いに関連し合っています。会議の質と量の問題は情報共有の問題につながり、それが意思決定の遅れを招き、さらに多くの確認作業と会議を生む結果となっています。

この悪循環を断ち切るには、個々の問題に対する一時的な対策ではなく、情報共有の仕組み自体を見直す必要があります。適切な改善を行えば、これらの問題を良い方向に変えていくことができます。

 

終わりに

本調査により明らかになったのは、日本のソフトウェア開発現場における卓越した潜在力と、その能力を最大限に引き出すための実践的な改善戦略です。

革新を推進する現場のプロフェッショナリズム

本調査において特筆すべき発見は、IT従事者の専門的かつ積極的な姿勢です。開発生産性向上に対して44.3%が肯定的な評価を示し、否定的な反応はわずか7.6%でした。「開発生産性は一時的な傾向である」という見方も、実証データにより覆されました。58.5%が継続的な価値を認識しており、798名の回答から技術的専門性と革新への強い意欲が明確に示されています。

この専門的な姿勢こそが、日本のソフトウェア開発の発展における重要な推進力となります。

特定された改善機会の分析

調査により、具体的な改善機会が明確になりました。約3割の組織で技術環境に差異があり、組織運営にも共通の課題が確認されています。

要件定義の不明確さ(53.5%)、過剰な会議(38.7%)、コミュニケーション上の課題(33.6%)等の非技術的要因が効率性を低下させていますが、これらは体系的なアプローチで改善可能な領域です。特に小規模組織では最新のAI開発支援ツールの活用が限定的ですが、適切な支援策で解決できます。

データから導かれた改善施策

本調査の分析により、組織プロセスの最適化が技術的投資と比べて実行可能性が高いことが明確になりました。DORA指標の導入やコミュニケーション効率化などの施策は、大規模な技術投資と比べて実装が容易で、短期間での効果測定が可能です。

これらの施策の有効性は組織の特性により異なるため、段階的な実装と効果検証を通じた実証的アプローチを推奨します。

即時実施可能な3つの戦略的施策

現場の専門性と実証された改善手法が揃った今こそ、以下の施策を開始する最適な時期です。

最優先事項:要件定義プロセスの最適化

  • ステークホルダー対話の体系化
  • プロトタイピングによる要件の具体化
  • 段階的要件確定プロセスの体系化

即時効果:会議運営の効率化

  • アジェンダの標準化と時間管理の体系化
  • 非同期コミュニケーションツールの戦略的活用
  • 会議時間20%削減の数値目標設定

基盤整備:DORA指標の体系的導入

  • 主要メトリクス(リードタイム、デプロイ頻度等)の定量的測定
  • 定期的な評価と改善サイクルの確立
  • データに基づく意思決定文化の醸成

日本の独自性を活かした技術革新

AI時代における競争激化は事実ですが、私たちには独自の競争優位性があります。日本のエンジニアが持つ品質への徹底したこだわり、協調的な組織文化、そして継続的改善への体系的アプローチは、国際的に評価される強みです。

本調査の結論として、これらの強みと現場の専門性、そして実証的な改善手法の統合により、日本のソフトウェア開発は確実な進化を遂げることが示されました。

  • 日本のソフトウェア開発の発展は、現時点での戦略的決断にかかっています。現場の専門性を基盤として、実証データに基づく改善手法を着実に実施することで、AI時代における競争力のある開発組織への進化が実現できます。

段階的かつ確実な変革を通じて、日本のソフトウェア開発における新たな発展期が近づいています。

Appendix A: 調査回答者の属性分析

今回の調査回答者の基本属性(性別、年齢、居住地、職種)を詳細に分析し、回答者構成の特徴と調査結果への影響を明らかにします。また、サンプリングバイアスの存在とその調査結果への影響についても検証し、本調査の適用範囲と限界を明確にします。さらに、調査で検証した9つの仮説の結果を統合的に整理し、日本のIT業界における開発生産性の実態について包括的な結論を提示します。

◆ 雇用形態

表A-1. 調査回答者の雇用形態

雇用形態 人数 割合(%)
会社員 684 85.7
フリーランス(個人事業主) 69 8.6
会社役員 21 2.6
派遣社員 14 1.8
その他 (具体的に) 10 1.3

◆ 性別構成

表A-2. 回答者の性別構成

性別 人数 割合(%)
男性 719 90.1
女性 79 9.9

◆ 回答者の年齢区分

表A-3. 年齢区分別の回答者分布とライフステージ特性

年齢区分 人数 割合(%) ライフステージ特性
15-24歳 2人 0.3 新卒・就職活動期、基礎スキル習得期
25-34歳 145人 18.2 キャリア形成期、結婚・子育て開始期
35-44歳 184人 23.1 中堅・リーダー期、子育て盛り、住宅購入期
45-54歳 168人 21.1 管理職・専門職期、教育費負担期
55-64歳 243人 30.5 ベテラン・指導者期、退職準備期
65歳以上 56人 7.0 再雇用・継続雇用期、豊富な経験活用期

◆ 勤めている業界

表A-4. 業界別の回答者分布

業界 人数 割合(%)
IT・通信 633 79.3
製造業 94 11.8
サービス業 14 1.8
金融業 12 1.5
建設・不動産 12 1.5
小売・卸売 9 1.1
エネルギー・インフラ 5 0.6
物流・運輸 5 0.6
医療・福祉 3 0.4
広告・マスコミ 3 0.4
農林水産業 2 0.3
教育・研究 1 0.1
公共・行政 1 0.1
その他 (具体的に) 4 0.5

◆ ソフトウェア開発の経験年数

表A-5. 回答者のソフトウェア開発経験年数分布

経験年数 人数 割合(%)
1年未満 8 1.0
1-3年 45 5.6
4-7年 81 10.2
8-12年 77 9.6
13年以上 587 73.6

◆ 所属会社のエンジニア数

表A-6. 所属会社のエンジニア規模分布

エンジニア数 人数 割合(%)
10人未満 141 17.7
10-50人 118 14.8
51-200人 170 21.3
201-1000人 161 20.2
1001人以上 208 26.1

◆ 現在の役職

表A-7. 回答者の役職分布

役職 人数 割合(%)
経営者・役員 26 3.3
部長クラス 55 6.9
課長クラス 101 12.7
係長クラス 121 15.2
一般社員 405 50.8
派遣社員 18 2.3
フリーランス(個人事業主) 60 7.5
その他 (具体的に) 12 1.5

◆ 職種構成の概要

表A-8. 職種別の回答者分布

職種 人数 割合(%)
ソフトウェアエンジニア(フロントエンド) 237 29.7
ソフトウェアエンジニア(バックエンド) 219 27.4
プロジェクトマネージャー 126 15.8
組み込みソフトウェアエンジニア 60 7.5
フルスタックエンジニア 37 4.6
エンジニアリングマネージャー 20 2.5
プロダクトマネージャー 12 1.5
データエンジニア 10 1.3
クラウドエンジニア 9 1.1
ゲームエンジニア 8 1.0
AIエンジニア / 機械学習エンジニア 7 0.9
セキュリティエンジニア 6 0.8
データサイエンティスト 6 0.8
プラットフォームエンジニア 5 0.6
QAエンジニア 5 0.6
プロセス改善エンジニア(SPI) 4 0.5
iOSエンジニア 3 0.4
Androidエンジニア 3 0.4
IoTエンジニア 3 0.4
DevOpsエンジニア 2 0.3
セキュリティアナリスト 2 0.3
テックリード 2 0.3
Site Reliability Engineer(SRE) 0 0.0
Software Engineer in Test(SET) 0 0.0
アジャイルコーチ 0 0.0
その他 (具体的に) 12 1.5

◆ ソフトウェア開発への関わり方

表A-9. ソフトウェア開発への関わり方の分布

関わり方 人数 割合(%)
【内製開発】正社員として開発業務を担当している 330 41.4
【内製開発】契約社員として開発業務を担当している 28 3.5
【内製開発】正社員として開発案件の企画・発注を担当している 41 5.1
【内製開発】派遣社員として派遣先の内製開発に参加している 17 2.1
【内製開発】役員など委任契約に基づき経営層として開発に関わっている 4 0.5
【受託開発】成果物の納品義務がある請負契約で開発している 145 18.2
【受託開発】成果物の納品義務がある準委任契約で開発している 44 5.5
【受託開発】工数や期間に応じた準委任契約(SESなど)で開発している 76 9.5
【受託開発】派遣社員として受託企業のプロジェクトに参加し開発している 30 3.8
フリーランスとして開発業務を行っている 54 6.8
自分の契約形態や開発の関わり方についてよく把握していない 21 2.6
その他 (具体的に) 8 1.0

◆ 開発しているプロダクト、またはサービス

表A-10. プロダクトまたはサービスの種類別分布

プロダクト、またはサービス 人数 割合(%)
業務システム(例:ERP、CRM、会計、人事) 440 55.1
組み込みソフトウェア(例:家電、車載システム) 145 18.2
インフラサービス(例:ホスティング、クラウド基盤、CDN、DevOpsツール) 113 14.2
コラボレーションツール(例:グループウェア、タスク管理、チャットツール) 106 13.3
EC/ネット通販(例:ECサイト構築、ECモール出店サービス) 66 8.3
セキュリティサービス(例:WAF、脆弱性診断) 57 7.1
マーケティング/広告ツール(例:マーケティングオートメーション、広告配信) 42 5.3
ゲームサービス(例:ソーシャルゲーム、コンシューマー向けゲーム) 27 3.4
転職・人材サービス(例:転職プラットフォーム、求人広告、採用管理システム) 19 2.4
その他 (具体的に) 40 5.0

◆ 開発しているプロダクト、またはサービスの提供方法

表A-11. プロダクトまたはサービスの提供方法別分布

提供方法 人数 割合(%)
オンプレミス(企業内サーバーで運用) 275 34.5
デスクトップアプリ(ローカルPCで動作) 175 21.9
SaaS(クラウド提供、例:Salesforce、Google Workspace) 174 21.8
ハイブリッド(オンプレミス+クラウド両方) 132 16.5
IaaS(仮想サーバー提供、例:AWS EC2、Azure Virtual Machines) 120 15.0
組み込みファームウェア(デバイスに直接書き込むソフトウェア) 92 11.5
組み込みアプリ(デバイス上で動作するアプリケーション) 90 11.3
PaaS(開発プラットフォーム、例:Heroku、Google App Engine) 62 7.8
モバイルアプリ(例:iOS / Android向けアプリ) 48 6.0
エッジコンピューティング(IoTやネットワーク機器上で動作) 40 5.0
FaaS / サーバーレス(関数単位で提供、例:AWS Lambda) 32 4.0
その他 (具体的に) 14 1.8

◆ デプロイ頻度

表A-12. デプロイ頻度の分布

更新頻度 人数 割合(%)
毎日またはほぼ毎日リリース 30 3.8
週に1回以上リリース 58 7.3
月に1回以上リリース 184 23.1
四半期ごとにリリース 170 21.3
半年に1回程度のリリース 108 13.5
年に1回以上のリリース 209 26.2
その他 (具体的に) 39 4.9

◆ 現在関わるプロダクトのライフサイクルステージ

表A-13. プロダクトのライフサイクルステージ別分布

ステージ 人数 割合(%)
【導入期(Introduction)】
・まだ市場に出たばかり or これからリリース予定
・顧客数が少なく、売上がほとんどない
・認知度を上げるためのマーケティングが重要 106 13.3
【成長期(Growth)】
・顧客数が増え、売上が急成長している
・競争が激しくなり、差別化が求められる
・開発やマーケティングに積極的に投資している 102 12.8
【成熟期(Maturity)】
・市場に定着し、売上の伸びが鈍化している
・競争が激しく、価格やコスト削減が重要な課題
・顧客維持やプロダクトの改良が中心 239 29.9
【衰退期(Decline)】
・顧客数が減少し、売上が落ちている
・撤退・縮小を検討している or 新プロダクトへ移行中
・ニッチ市場向けに特化する可能性がある 50 6.3
【わからない / 判断が難しい】
・プロダクトのステージがはっきりしない
・異なるフェーズが混在している 301 37.7

◆ 居住地分布分析(日本のみ)

都道府県別分布(上位10位)

表A-14. 都道府県別分布(上位10位)

順位 都道府県 人数 割合
1 東京都 198人 24.8%
2 神奈川県 123人 15.4%
3 埼玉県 68人 8.5%
4 千葉県 63人 7.9%
5 大阪府 62人 7.8%
6 愛知県 47人 5.9%
7 兵庫県 27人 3.4%
8 福岡県 23人 2.9%
9 北海道 22人 2.8%
10 宮城県 12人 1.5%

首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)が56.6%を占める結果となりましたが、これは実際のIT従事者の地域分布(首都圏約45%)と比較して11.6ポイント高い数値となっています。この差異は、インターネット調査の手法的特性により生じたサンプリングバイアスの可能性があります。

地域分布に関する分析結果は、このバイアスを考慮して解釈する必要があり、全国のIT従事者の実態を完全に反映したものではない点にご注意ください。

統計分析手法

  • 記述統計: 平均値、標準偏差、95%信頼区間
  • 推測統計: カイ二乗検定、t検定(Welchの補正適用)、一元配置分散分析
  • 多重比較補正: Bonferroni補正、False Discovery Rate制御²
  • 効果量: Cohen’s d、Cramer’s V、決定係数R²
  • 相関分析: Pearsonの積率相関係数、Spearmanの順位相関係数

¹ Cohen, Jacob. Statistical Power Analysis for the Behavioral Sciences. 2nd ed. Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum Associates, 1988. ² Benjamini, Yoav, and Yosef Hochberg. “Controlling the False Discovery Rate.” Journal of the Royal Statistical Society: Series B 57, no. 1 (1995): 289-300.

◆ 調査結果の注意点

本調査はインターネット調査として実施し、所定の回答者数に達した時点で調査を締め切りました。この調査手法により、以下のようなサンプリングバイアスが生じている可能性があります。

1. 性別バイアス

  • 本調査:男性90.1%、女性9.9%
  • 総務省「労働力調査」IT業界:男性約75%、女性約25%³
  • バイアス:女性の回答率が業界平均を15.1ポイント下回る

2. 年齢バイアス

  • 本調査:平均年齢48.0歳、50代以上が37.5%
  • 同調査IT業界:30代が最多層、平均年齢約42歳
  • バイアス:高年齢層に偏った回答構成

3. 地域バイアス

  • 本調査:首都圏56.6%(東京24.8%+神奈川15.4%+埼玉8.5%+千葉7.9%)
  • 実際のIT従事者分布:首都圏約45%
  • バイアス:首都圏集中が実態より11.6ポイント高い

Appendix B: 改善施策のROI分析

本章では、開発生産性向上のための各種改善施策について、投資対効果(ROI)の観点から試算・提案を行います。調査結果で明らかになった課題に対し、具体的な改善策を提示します。各施策の仮想的な投資額と期待効果を数値化して比較検討し、限られた予算の中で最も効果的な施策の優先順位付けを行います。

試算に基づく提言:組織改善(特にDORA指標導入やコミュニケーション改善)は、技術投資と比べて高いROI値を示す傾向にあります。そのため、限られた予算の中では組織改善から着手し、その後得られた利益を技術投資に振り向けることで、持続可能な改善サイクルを構築できる可能性があります。

1. 組織改善施策のROI分析

DORA指標導入(ROI +523%)やコミュニケーション改善(ROI +287%)などの組織改善施策は、高額な技術投資と比較して、はるかに高い投資対効果を示しています。この試算結果は、組織改善施策の方が短期的なROIが高いことを示しており、限られた予算の中では組織改善から着手することが効果的であることを示唆しています。

2. 段階的投資による持続可能な改善サイクル

高ROI施策で確実な成果を上げ、その利益を技術基盤整備に再投資する段階的アプローチが最も現実的です。CI/CDやGitHub移行などの技術投資は3年では投資回収が難しいものの、5年スパンでは十分な収益性を示します。組織改善で得た利益を技術投資に振り向けることで、持続可能な改善サイクルを構築できます。

3. 組織特性に応じたカスタマイズの必要性

提示したROI試算は、中規模IT企業100名を想定したモデルケースです。実際の効果は、組織の現状、業界特性、技術的成熟度により大きく異なります。各組織は自社の状況に合わせて数値を調整し、最適な改善戦略を策定する必要があります。

この分析結果により、開発生産性向上への投資判断において、客観的な根拠に基づいた優先順位付けが可能となり、限られたリソースで最大の効果を得るための戦略的指針を提供しています。

注意:以下の数値は試算例であり、実際の効果は組織の状況により大きく異なります。


◆ 試算方法

開発生産性向上への投資を検討する際、限られた予算の中でどの施策が最も効果的かを判断することが重要です。ここでは、調査結果で明らかになった課題に対する具体的な改善策について、投資対効果(ROI)を試算し、優先順位を提案します。

仮定:エンジニア数100名・標準時給・3年評価の設定で計算

表 B-1. ROI計算のための基本パラメータ

項目 設定値 計算根拠 調整方法
対象人数 100名 エンジニア数100名の組織 実際のエンジニア数に変更
平均時給 ¥4,500 年収900万÷2,000時間 自社の平均年収÷2,000時間
評価期間 3年間 設備投資の標準回収期間 予算承認プロセスに合わせて調整
年間労働時間 2,000時間 年間営業日250日×1日8時間(有給休暇・祝日等を除く実働ベース) 残業込みの実働時間に調整

◆ DORA指標導入の詳細ROI分析

最も効果的な施策として、DORA指標導入の詳細な投資効果を試算します。

基本計算式: ROI = (3年間の利益 – 初期投資額) ÷ 初期投資額 × 100

表 B-2. DORA指標導入に関する投資内訳

投資項目 金額 内容
測定ツール導入費 ¥3,000,000 DORA指標測定システム構築
コンサルティング費 ¥2,000,000 専門家による導入支援
組織変革支援費 ¥1,500,000 研修・ワークショップ実施
合計投資額 ¥6,500,000

表 B-3. DORA指標導入による効果試算

効果項目 計算 金額
年間労働時間 100名 × 2,000時間 200,000時間
生産性向上率 DORA研究の保守的推定 15%
年間効果時間 200,000時間 × 15% 30,000時間
年間効果金額 30,000時間 × ¥4,500 ¥13,500,000
3年間効果 ¥13,500,000 × 3年 ¥40,500,000

ROI計算結果: (¥40,500,000 – ¥6,500,000) ÷ ¥6,500,000 × 100 = 523%


◆ 各組織での計算方法

カスタマイズ計算式:

年間効果金額 = エンジニア数 × 年間労働時間 × 改善率(*) × 時給

*改善率の目安は以下の通り

表 B-4. 施策別の改善率と導入期間の比較

# 施策 改善率範囲 平均値 導入期間
1 DORA指標導入 10-20% 15% 3-6ヶ月
2 コミュニケーション改善 5-15% 8% 1-3ヶ月
3 CI/CD基盤整備 15-30% 22% 6-18ヶ月
4 従来型ツール刷新 10-25% 18% 12-36ヶ月

カスタマイズ計算計算例:

表 B-5. 改善施策のROI・優先度比較

# 改善施策 初期投資 年間効果 3年間効果 ROI 優先度
1 DORA指標導入 ¥6.5M ¥13.5M ¥40.5M +523% 🔥 最高
2 コミュニケーション改善 ¥2.0M ¥5.5M ¥16.4M +287% 🔥 最高
3 CI/CD基盤整備 ¥14.0M ¥2.7M ¥8.1M -42% ⏳ 長期検討
4 GitHub移行 ¥9.4M ¥2.4M ¥7.2M -23% ⏳ 長期検討

◆ 改善施策別ROI比較

ROI計算で注意すべきポイント

  • 実装効果のポイント: CI/CDの効果は2〜3年目から本格化し、組織の成熟度が低いほど改善効果が高く、複数施策の組み合わせで相乗効果が生まれます。また、従業員満足度向上などの定性的な効果も期待できます。

高ROI施策(即座に実行推奨)

  • 高効率な改善施策: DORA指標導入(ROI: +523%)による測定・改善の仕組み構築とコミュニケーション改善(ROI: +380%)による会議効率化で即効性の高い成果が期待できます

意外な発見:コストと効果の相関

  • 高額ツール(CI/CD・GitHub)は導入コストが高く、短期的なROIは低いものの、5年以上の長期スパンで見ると十分な収益性があるため、まずは高ROI施策で利益を確保してから段階的に導入することが効果的です。

Appendix C: 仮説検証一覧

本調査では、日本のIT業界における開発生産性に関する9つの仮説を統計的に検証しました。経験豊富なIT従事者を対象とした分析により、各章で詳細に検証した結果、以下の統合的な結論が得られました。

◆ 9つの仮説中4つが否定:予想に反してポジティブ、構造的課題は確認

表 C-1. 仮説検証結果一覧

検証項目 判定 検証結果 統計的有意性 関連章
アジャイル実践者は開発生産性が嫌いである ❌ No アジャイル65.2% vs ウォーターフォール39.5%
χ² = 23.537, p < 0.001 高度に有意 開発フレームワーク利用状況
ウォーターフォール開発では生産性の計測は無意味と考えられている ❌ No アジャイル取り組み率59.3% vs ウォーターフォール35.7%
χ² = 19.962, p < 0.001 高度に有意 開発フレームワーク利用状況
『生産性の計測は危険』という見方が定説になっている ❌ No ポジティブ44.3% vs ネガティブ7.6%
p < 0.001 高度に有意 開発生産性への印象・認識
開発生産性は一過性のブームと見られている ❌ No ブーム認識10.2% vs 持続性認識58.5%
z = -20.349, p < 0.01 高度に有意 開発生産性向上への取り組み状況
古い開発環境を使用している企業では開発生産性への関心が薄い ✅ Yes GitHub利用者52.1% vs VSS利用者31.7%
p < 0.001 高度に有意 ソースコード管理ツール利用状況
業種や業態によって開発生産性への取り組みに差がある ✅ Yes IT・通信79.3% vs 他業界
p < 0.001 高度に有意 開発フレームワーク利用状況
プロダクトの性質によっても取り組みに差がある ✅ Yes SaaS48.2% vs 組み込み26.4%
p < 0.001 高度に有意 開発フレームワーク利用状況
開発生産性の定義は人によって異なる ✅ Yes チーム効率50.6% vs 業績向上12.9%
p < 0.001 高度に有意 開発生産性への印象・認識
商習慣など、日本のIT業界特有の文化が影響している可能性がある ✅ Yes 不明確要件53.5%・会議過多38.7%
p < 0.001 高度に有意 開発生産性の課題と阻害要因

ライセンス

「ソフトウェア開発における「開発生産性」に関する実態調査レポート」は、クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 4.0 国際 (CC BY-SA 4.0) ライセンスの下で提供されています。

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ファインディ株式会社 (2025). 「ソフトウェア開発における『開発生産性』に関する実態調査」.
CC BY-SA 4.0. <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/>

本調査レポートが日本のソフトウェア開発業界の成長を促進し、開発生産性の向上に向けた取り組みの礎となることを期待しております。